
基幹システム入れ替え費用は何で変わる?見積もり前の範囲整理
基幹システム入れ替え費用は、対象業務・機能・外部連携・移行データ・見積もりに含める作業で変わります。金額を比べる前にそろえたい条件を、IPAの資料も踏まえて解説します。
こんにちは、平岡です。基幹システム入れ替え費用は、対象にする業務や機能、外部連携、データ移行の範囲、見積もりに含める作業によって変わります。金額を比べる前に、各社へ渡す前提条件をそろえることが大切です。
IPAの公開資料からは、基幹システムの対象方式・範囲別に比較できる標準的な入れ替え費用額を確認できません。この記事では相場額を示さず、見積もり前に決めておきたい範囲と、各社に伝える項目を整理します。
基幹システム入れ替え費用の全体像

見積もりは、導入時にかかる初期費用と、稼働後の運用・保守費用に分けて考えます。初期費用は、要件整理や設計・開発、移行、テストなど、どこまでの作業を含めるかをそろえて比較します。運用・保守費用も、対象期間や対応範囲が同じかを見積書で見比べます。
クラウド型かオンプレミス型か、パッケージ導入か個別開発かによって、見積もりの前提は異なります。方式名だけで比較せず、利用環境の準備や設定、個別機能の開発、運用・保守のどこまでが提示額に含まれるかを分けて記載してもらいましょう。
IPAの「システム再構築を成功に導くユーザガイド」は、再構築計画で業務要件の変更・追加やパッケージ製品の利用を検討対象に挙げています。つまり、現行をそのまま作り直すのか、業務や製品の選択も含めて見直すのかを、見積もりの前提にできます。
対象方式や範囲が異なる見積もりは、金額だけでは比べられません。標準的な費用額を前提にせず、各社の見積もり条件と含まれる作業を確認しましょう。
見積もりの前に対象業務を決める

まず、刷新する業務と今回の対象外にする業務を分けます。販売管理、在庫管理、会計処理を同時に刷新するのか、販売管理から先行させるのかで、見積もりの対象範囲は変わります。拠点や部門によって利用業務が異なる場合は、その違いも書き出します。
IPAの要件定義ガイドは、業務一覧・業務フローをもとにシステム化業務一覧を作り、各機能と対応する業務を関連付ける方法を示しています。たとえば、受注入力、出荷指示、請求処理を業務フローに並べ、それぞれをどの機能で扱うか対応づけると、対象業務の抜けを見つけやすくなります。
見積依頼書には、業務名だけでなく利用部門・拠点、同時刷新か段階導入か、対象外の業務を記載します。対象外を明示しておけば、「今回の金額に含まれていると思っていた」という認識のずれを減らせます。
対象業務:販売管理、在庫管理
利用部門・拠点:営業部、倉庫部/本社・倉庫
導入範囲:販売管理と在庫管理を同時に刷新
対象外:会計処理(現行システムを継続利用)
既存機能を残すか、変えるか整理する

現行システムの機能は、見積もり前に「新システムで継続」「標準機能で代替」「追加開発」「廃止」の4つに分けます。独自機能を残す場合は、機能名に加えて、どの業務で誰が使い、なぜ必要なのかも記録します。
IPAの「システム再構築を成功に導くユーザガイド」は、業務要件の変更・追加とパッケージ製品の利用を検討項目に挙げています。現行の操作や帳票をすべて再現する前提にせず、標準機能で代替できるもの、業務変更で廃止できるものを切り分けるのがポイントです。
見積もりには、追加開発の対象機能と、標準機能での代替を想定する機能を区別して提示してもらいます。カスタマイズを再現する範囲が広い場合は、対象にする機能を明記し、対象外の機能も併記すると各社の条件がそろいます。
継続・標準機能で代替・追加開発・廃止の4区分で整理します。追加開発にする機能は、利用部門と業務上の理由まで記載すると、必要性の判断と見積もり条件を共有しやすくなります。
外部連携と入れ替え対象外の境界を決める

現行システムと接続している外部システムを洗い出し、連携を継続するのか、方式を見直すのか、今回の対象外にするのかを決めます。受注データを別システムへ渡す、会計システムへ仕訳データを連携する、といった業務単位で一覧にすると、連携の目的も伝えられます。
IPAの要件定義ガイドは、成果物例として「外部インタフェース一覧」「外部インタフェース名」「インタフェース項目説明」「インタフェース処理説明」を示しています。また、開発対象と対象外の境界に着目し、境界部分の入出力データをレビューする方法も挙げています。連携先の名前だけでなく、何を受け取り、何を渡すかまで整理するのが実務上の要点です。
IPAの再構築ガイドは、外部接続先の調査項目例として、メッセージ連携やファイル転送方法、文字コード変換の有無・種類を挙げています。連携先の改修や接続確認を誰が行うかも見積もり条件に含め、ベンダー側・自社側・連携先側の担当を分けます。
連携先:会計システム
データ:仕訳データ
方式・形式:メッセージ連携/ファイル転送、文字コード変換の有無
見積もり対象:新システム側の対応、接続確認、連携先の改修
連携先や接続方式ごとの具体的な費用は、個別の条件が分からない段階では示せません。連携先の改修費や接続確認が見積もりに含まれるか、対象外なら誰が担うかを明確にします。
データ移行の対象と範囲を定める

移行するデータの種類、対象期間、データの整理・変換の範囲を決めます。たとえば、取引先マスターと未処理の伝票だけを移すのか、過去の取引履歴も含めるのかを分けて提示します。現行データに重複や空欄があるかなど、把握できている状態も見積もり先に共有します。
IPAの非機能要求グレード2018活用シートは、移行データ量の区分例として「1TB未満」「1PB未満」「1PB以上」を掲載しています。移行データ形式の例には、アプリケーション依存形式・テーブル形式・文字コードがあります。自社のデータ量や形式が未確認なら、現行システム調査を見積もりに含めるかも相談項目になります。
同シートは、移行対象データについて、旧システムの調査、データ抽出・変換、本番導入・確認の作業分担を規定するよう記載しています。移行作業を一括で記載するだけでなく、どの作業を自社とベンダーのどちらが担うかを見積もり条件にします。
見積もりは、現行データ全体を移す案と、必要なデータに絞る案のように、範囲を分けて提示してもらう方法があります。具体的なデータ量や移行期間は現行データの実態によるため、未調査の部分は確定値として扱わず、調査の要否と費用の扱いを分けます。
見積もりに含める費用項目をそろえる

見積書では、要件整理、設計・開発、データ移行、テスト、利用者への説明、運用・保守などを項目ごとに確認します。初期費用と稼働後の費用を分け、各作業の成果物や対応範囲も記載してもらうと、総額の内訳を比較できます。
IPAの非機能要求グレードは、非機能要求項目を分類・一覧化し、要求レベルを段階的に示すツール群として公開されています。機能以外の要求も見積もり条件に関係するため、要件整理の際に同グレードを参照する方法があります。各項目の料金や相場は、ベンダーの見積もりで確認する必要があります。
IPAは、現行システム調査には専門的な技術が必要で、コストと時間を要するとモデル契約見直しのポイントで説明しています。現行仕様が十分に分からない場合は、調査を見積もりから外した金額と、調査を含めた金額を分けてもらうと、後から追加になる作業を把握しやすくなります。
見積もりに含まれない作業が曖昧だと、各社の提示額を同じ条件で比べられません。利用者への説明や本番導入後の保守など、必要な作業ごとに「含む・含まない・未確定」を示しましょう。
複数社の見積もりを同じ条件で比較する

各社には同じ対象業務、機能、外部連携、移行データの範囲を提示します。見積もりを受け取ったら、総額だけでなく、含まれる作業、対象外項目、追加費用が発生する条件、成果物、保守の範囲、未確定事項を同じ項目で並べます。
仕様が未確定のまま金額だけを比べるのではなく、未確定事項を一覧にし、各社がどの前提で見積もったかを記録します。前提が異なる場合は、条件を合わせた再見積もりを依頼します。
IPAは参考見積依頼後に仕様内容を追加・修正した場合、依頼先企業すべてに同時通知し、再見積もりを依頼する対応を公表しています。見積もり途中で条件を変えるなら、特定の会社だけに変更点を伝えず、依頼先各社へ同じ内容を共有する進め方が比較の公平性につながります。
- 対象業務・利用部門・対象外業務が同じか
- 追加開発、外部連携、移行データの範囲が同じか
- 要件整理・テスト・利用者説明などの作業を含むか
- 追加費用の条件、成果物、運用・保守の範囲が明記されているか
- 未確定事項と、確定後に金額が変わる条件が分かるか
金額の高低だけでなく、同じ範囲を含む見積もりかを先に見ます。対象外作業や未確定事項が残る場合は、総額を横並びにする前に条件をそろえます。
まとめ
基幹システム入れ替え費用を比較する前に、対象業務、既存機能の扱い、外部連携、移行データを整理します。さらに、要件整理から運用・保守まで、どの作業を見積もりに含めるか、対象外は何かを文書に残します。
次の一歩は、対象業務・機能・連携・移行データと、含める作業を1枚の条件表にまとめ、同じ内容を複数社に渡すことです。条件がそろえば、金額だけでなく見積もりの前提や追加費用の条件も比較しやすくなります。
参考・出典
- IPAの「システム再構築を成功に導くユーザガイド」は、再構築計画で業務要件の変更・追加やパッケージ製品の利用を検討対象に挙げている。 — https://www.ipa.go.jp/archive/publish/secbooks20180223.html
- IPAの要件定義ガイドは、システム化業務一覧を業務一覧・業務フローに基づいて作成し、各機能と対応する業務を関連付ける方法を示している。 — https://www.ipa.go.jp/archive/publish/qv6pgp0000000wrt-att/000079352.pdf
- IPAの再構築ガイドは、外部接続先について、メッセージ連携やファイル転送方法、文字コード変換の有無・種類を調査項目例として挙げている。 — https://www.ipa.go.jp/archive/publish/qv6pgp000000117x-att/000057294.pdf
- IPAの非機能要求グレード2018活用シートは、移行データ量の区分例として「1TB未満」「1PB未満」「1PB以上」を掲載している。 — https://www.ipa.go.jp/archive/digital/iot-en-ci/jyouryuu/hikinou/ps6vr700000077he-att/000066170.pdf
- IPAの非機能要求グレードは、非機能要求項目を分類・一覧化し、要求レベルを段階的に示すツール群として公開されている。 — https://www.ipa.go.jp/archive/digital/iot-en-ci/jyouryuu/hikinou/ent03-b.html
- IPAは参考見積依頼後に仕様内容を追加・修正した場合、依頼先企業すべてに同時通知し、再見積を依頼する対応を公表している。 — https://www.ipa.go.jp/choutatsu/third-party-investigation.html
- IPAは、現行システム調査には専門的な技術が必要で、コストと時間を要するとモデル契約見直しのポイントで説明している。 — https://www.ipa.go.jp/digital/model/review-point.html
- IPAの公開資料からは、基幹システムの対象方式・範囲別に比較できる標準的な入れ替え費用額は確認できなかった。 — https://www.ipa.go.jp/archive/digital/iot-en-ci/jyouryuu/sys_upper.html



