meguli
業務効率化読了 約11分

AI利用規程 ひな形を自社業務に合わせる方法|部門別の調整ポイント

AI利用規程のひな形を自社に合わせる手順を解説。部門別の確認項目、条文のカスタマイズ例、個人情報やサービスごとのデータ取り扱いを踏まえた運用前の確認点を紹介します。

こんにちは、平岡です。AI利用規程のひな形は、そのまま社内に配るのではなく、部門ごとの利用目的・入力情報・生成物の使い方に合わせて条文を選び直すのが基本です。

ひな形を自社向けに直すときは、まずAIを使う業務を洗い出し、入力する情報と出力を確認する人を決めます。そのうえで、全社共通のルール、部門別の補足、現場で見る手引きに分けると、規程の条文と日々の判断をつなげやすくなります。弊社では、部署名だけで線を引かず、具体的な利用場面ごとに検討することを勧めています。

ひな形をそのまま使わず自社向けに直す理由

自社向け調整の基本

AI利用規程のひな形は、決めるべき項目を見落とさないためのたたき台です。たとえば「機密情報を入力しない」という一文だけでは、営業が公開済みの製品情報を使って提案書を作る場合と、人事が応募者の情報を含む文書を扱う場合の違いを判断できません。業務ごとの目的と情報の種類に合わせて、許可する範囲や確認手順を具体化します。

個人情報保護委員会は、個人情報を含むプロンプトを生成AIに入力する場合、特定済みの利用目的の達成に必要な範囲内か確認するよう求めています。また、個人データを含むプロンプトが回答生成以外の目的で扱われる場合には、個人情報保護法に違反する可能性を示し、提供者が機械学習に利用しないことなどの確認を求めています。

同委員会の通則ガイドラインでは、個人情報・個人データ・保有個人データなどを区別し、それぞれに課される義務が異なるとされています。利用目的についても、業種を示すだけでは多くの場合、できる限り具体的に特定したことになりません。「顧客対応に使う」だけで入力情報や目的を決めたことにしないのが、規程を直す際の要点です。

条文を選び直す

業務の目的、入力情報、出力の利用先をひとまとまりで確認します。部門内でも用途や情報が異なるなら、ルールを分けて検討します。

自社業務へ当てはめるための調整手順

調整の進め方

調整は、部門ごとに「何の業務で使うか」から始めます。営業なら提案書の構成案、人事なら求人票の文案、経理なら社内向けの手順説明など、対象業務を具体的な書類や作業単位で記録します。次に、そのとき入力する情報、生成物を誰がどのように使うかを並べます。

  • 業務と利用目的:どの書類・作業の、どの工程でAIを使うか
  • 入力情報:公開情報、社内情報、個人情報など、入力する内容と出所
  • 生成物の扱い:社外提出、顧客への送信、社内検討などの利用先
  • 確認者:内容・事実・表現を誰が確かめ、誰が最終判断するか
  • 例外時の経路:迷う用途を誰に相談し、利用開始前にどう判断するか

洗い出した内容を、ひな形の条文と照らし合わせます。たとえば、入力情報の条件が曖昧なら入力可否の条項を具体化し、顧客に送る文章を作るなら送信前の確認者を決めます。判断に迷う用途は「禁止」とだけ書いて止めるのではなく、相談先、提出する情報、承認後に利用を始める手順まで規程または補足に含めます。

記録する単位

部門名だけでなく、業務・入力情報・出力の利用先・確認者を一組として記録します。用途が複数ある業務は、別々の行に分けると条文の調整箇所が見つけやすくなります。

AI利用規程ひな形に入れる基本項目

基本項目の確認

完成版のひな形を自社用に埋めるときは、項目名だけでなく「自社で決める内容」を隣に書き出します。対象者と目的、利用できるツール、入力情報、生成物の確認、権利への配慮、問題発生時の報告などを、次のように分けると抜けを見つけやすくなります。

  • 目的・適用範囲:対象となる従業員や業務、規程を適用する範囲
  • 利用可能なツール:会社として利用を認めるサービスとアカウントの種類
  • 入力情報:入力できる情報、入力前に加工・除外する情報、判断に迷う場合の相談先
  • 生成物の確認:事実、数値、表現、権利への配慮を確認する担当者とタイミング
  • 問題発生時の報告:誤送信や不適切な出力などを誰に、どの経路で報告するか

サービス名だけで利用可否を決めず、アカウント種別とデータの扱いを分けて確認します。ChatGPT個人向けアカウントでは、Web版の設定から「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにできます。この設定では会話履歴を残したままモデル学習への利用を停止できます。

ChatGPT Web版 → 設定 → データコントロール → すべての人のためにモデルを改善する:オフ

一方、OpenAIはChatGPT Business、Enterprise、EduおよびAPIの入出力を、既定ではモデルの学習・改善に使用しないとしています。AnthropicはClaude Free・Pro・Maxの利用者向けに、会話データをモデル改善に使うか選ぶ設定を提供していますが、Claude for WorkやAPIなど商用規約下のサービスにはこの変更が適用されないと案内しています。

Gemini Appsでは「Keep Activity」をオフにすると、フィードバックを送信しない限り、以後のチャットはAIモデルの改善に使われないとGoogleは説明しています。ただし、一時チャットと「Keep Activity」オフ時のチャットも、応答や安全確保のためアカウントに72時間保持されます。Google Cloudの生成AIサービス規約では、事前の許可・指示がない限り、顧客データの入力と生成出力を、出力作成に合理的に必要な期間を超えて顧客アカウント外に保存しないとしています。

これらはサービスや契約条件ごとの違いです。「モデル改善に使われない」ことだけを根拠に、入力情報を自由に決めないようにし、利用目的・入力内容・保存や処理の条件を規程上の判断材料にします。

部門別の確認項目

部門別の確認視点

部門別の表には、利用目的、入力情報、生成物の利用先、確認者を並べます。以下は記入例です。実際には、各部門に「どの作業で使うか」を聞き、部署名だけで一律に許可・禁止を決めないようにします。

  • 営業:提案資料の下書き/製品情報や公開情報を入力するか/顧客提出前に営業担当者が確認
  • 人事・採用:求人票や案内文の作成/応募者情報を含めるか/採用担当者が内容と個人情報の扱いを確認
  • 経理:社内向け手順や問い合わせ回答の下書き/取引先情報や個別の数値を入力するか/担当者が数値と社内ルールを確認
  • 広報・マーケティング:告知文や投稿案の作成/公開前の情報を含めるか/広報担当者が事実と表現を確認
  • 開発:仕様の整理や説明文の作成/社内情報を入力するか/開発責任者など、内容を判断できる担当者が確認

人事・採用で応募者の情報を含む文章を扱う場合と、公開済みの求人情報をもとに案内文を作る場合は、同じ「採用業務」でも入力情報が異なります。営業でも、社外公開済みの製品説明と、公開前の提案条件では扱いを分ける考え方が必要です。

部門ごとのカスタマイズ例

条文の調整例

共通条文の「入力情報に注意する」を、利用場面・入力条件・生成物の確認方法に分けて書くと、現場が判断しやすくなります。以下は社内規程に落とし込むための例文です。角括弧の箇所は、自社の部署名や相談先に置き換えます。

営業資料:公開済みの製品情報を用いた提案資料の下書きに利用できる。顧客名、個人情報、公開前の条件は入力しない。顧客へ提出する前に営業責任者が内容を確認する。
人事文書:求人票や社内向け案内文の文案作成に利用できる。応募者を識別できる情報は入力しない。公開・送付前に人事担当者が内容を確認する。
広報文案:告知や投稿の文案作成に利用できる。未公表の情報は入力せず、公開前に広報担当者が事実関係と表現を確認する。
判断に迷う場合:[相談窓口]へ利用目的、入力予定の情報、出力の利用先を伝え、判断を得てから利用する。

例文は、実際の業務に合わせて条件を入れ替える前提です。たとえば営業資料で顧客情報を使う必要があるなら、ひな形の文言をそのまま緩めるのではなく、個人情報を含むプロンプトの利用目的や、提供者が機械学習に利用しないことなどを確認する手順を別途定めます。

規程・ガイドライン・現場向け手引きの分け方

ルールの使い分け

一つの文書に細かな運用例まで詰め込むと、利用場面ごとの説明を探しにくくなることがあります。弊社では、全社共通の規程、部門別の補足、現場向け手引きの三層に分けて整理する方法を提案しています。

  • 規程:対象者、利用可能なツール、入力情報の基本ルール、報告経路など全社共通の決定事項
  • 部門別の補足:営業資料、人事文書、広報文案など、部署ごとの入力条件と確認者
  • 現場向け手引き:利用場面ごとのOK・NG例、迷ったときの相談先、利用前後の手順

経済産業省・総務省の「AI事業者ガイドライン」は第1.2版が2026年3月31日付で公表され、本編に「第5部 AI利用者に関する事項」が設けられています。自社の文書を整理する際に参照できますが、社内で誰が何を判断するかは、規程や補足に具体的に記載します。

たとえば手引きに「顧客向け文書は担当者が確認」とだけ書くのではなく、「金額・納期・製品仕様は元資料と照合し、顧客へ送信する担当者が確認する」のように、確認箇所と担当を示します。規程では共通の責任を定め、手引きでは実際の書類や作業に沿って補う構成です。

運用開始前に確認すること

運用前の確認

運用開始前には、規程を配布するだけでなく、利用者が迷ったときの相談先、例外利用の申請方法、問題発生時の報告経路を決めます。問い合わせ先は部署名だけでなく、申請に必要な情報も示すと判断を進めやすくなります。たとえば、利用目的、入力予定の情報、使用するサービス、生成物の利用先を申請項目にします。

個人情報を含む入力を想定する場合、個人情報保護委員会が示す利用目的の範囲や、回答生成以外に個人データが扱われるかを確認する観点を、相談手順に含めます。サービスのアカウント種別や設定が変わるとデータの扱いも異なり得るため、利用ツールを追加・変更するときは、規程や部門別補足の対象サービスと条件を見直します。

運用開始後の見直し時期や担当者も決めておきます。新しい業務でAIを使い始めたとき、利用サービスを変えたとき、問題の報告を受けたときに、該当する条文・手引き・相談先を更新する流れを記録します。

設定だけで判断しない

モデル改善への利用を止める設定と、入力してよい情報の範囲は別の確認事項です。サービス名だけで判断せず、アカウント種別やデータの扱いを確かめ、個人情報を含む利用は目的と入力内容を照合します。

まとめ

AI利用規程のひな形を自社向けに直すには、部門ごとの業務目的、入力情報、生成物の利用先、確認者を洗い出し、それぞれに合う条文を選び直します。全社共通の規程に加え、部門別の補足と現場向け手引きを用意すると、共通ルールと具体的な判断例を分けて示せます。

次の一歩は、部門ごとにAIを使う業務・入力情報・出力の確認者を一枚の表に書き出すことです。 まず営業資料や求人票など、実際に作成する書類を一つ選び、利用目的と入力情報から検討を始めてみてください。

参考・出典

この記事をシェア
𝕏 でポストB! はてブ
m
株式会社meguli

AI×DXで、社会の巡りをよくする。中小企業の現場で使えるAI活用・業務改善の実践情報を発信しています。

ご相談・お問い合わせはこちら →

あわせて読みたい